GW目前ですが、工場はよい緊張感で大量ひのきの加工をしています。あまりに一定作業なので過去の記憶が少し思い出されますが、思い出というのはなぜか美化されるものですね。
昔、工場は超一流の技術職人さんがいて、ピリピリした毎日でした。造作、書院はもちろんフラッシュ、現場仕事、木材鋼材の知識、建具金物、精密機械構造、電気、自分の思う段取りで誰の手も空かせないで工場仕事を回したり、何より素晴らしかったのは見習いが入っても妥協せず製品品質や生産スピードを絶対に落とさせなかったこと、見習いにはこうしろ!と言いきって覚えさせました。本物のオールマイティーと内外から言われ、誰もが舌を巻いて随一と言わせしめた超敏腕の職人さん。
お酒の席だったか、「神の手」と言われまた違った職人さんと「どちらが上か」というような話をお調子者が言いました。
すると、「自分は建具、納まり、全てを知り過ぎたので逃げが分かってしまう。逃げをつくらないのが建具の誇りだから自分は駄目なんだ、後者の職人さんが上だ。材料の置き場所、機械までの歩数、全てを計算尽くしている、何より感覚が凄い」と言いました。
職人の中の職人、権力に響かず、周りを寄せ付けないで技術を貫き通す強さもあった方。どちらかというと敵を多く作ってしまい、強面だけど下の面倒見の良さの一面もありました。そういう一筋縄ではいかない職人さんが負けを認め皆の前で口外した。そんな仰天したシーンに出くわした忘れていた思い出が蘇りました。
昔の職人さんは自分の位置に認識があって技術の元には正直で素直、それを認める潔さがあったのですね。
本物の職人、、しびれた美しい過去の記憶です。GWはいえ時間なので、一刻でも多く道具をさわりたい。福西